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Spark plug 電光石火

Spark plug 電光石火_d0207730_1231616.jpg

内燃レシプロエンジンで必須のものの1つがコレ。
目指す完全燃焼の3要素のうちの1つを担うとても大事なモノなのだが、一般ユーザーに気にしてもらう割合が低いのも特徴。

白金プラグが標準装備(4輪)されるようになってからは10万キロ交換という超ロングスパンとなり驚いたのも今は昔の話に。今思えばちょうどディストリビューター(デスビ)が無くなってくる頃と重なるような気がする。レーサーライクなダイレクトイグニッション点火がフェアレディだとかの各社スポーツタイプに装備され、入庫してボンネットを開けるのが楽しみだったが、それが今やファミリーカーに当たり前のように装備されている。

ダイレクトイグニッションをスゴイと感じたのは、どうも調子が悪い、客曰く時々ブルンっ、と震える。ということで入庫した直6エンジンをチェックしてみると、1本の外側電極が溶けて半分になっているにもかかわらず損失の少ないダイレクトイグニッションのお陰で(6気筒ということもあったと思う)通常走行する分には大丈夫だったという症例が一番印象に残っている。軽4の3気筒エンジンや小型自動車の4気筒等で1発死んだり半死に(ほとんどがコードやデスビ不良)だったりすると阿呆でも「何かおかしいぃ!」とわかるくらい激変する。仕事に使う車両などはレーシングエンジンとは違う意味でのものすごい負荷とメーカーも想定し得ない劣悪状況の中での耐久テストのようなもので、それにへこたれない日本車の恐ろしいほどの強さというのはそのあたりで体感させてもらった。

2輪の場合はダイレクトイグニッションはまだまだ後からで、簡易的な同時点火のシステムが長かった。水冷直4が大流行した頃、急激にプラグ交換の到達困難度が上がって辟易した。仕事でも二度とやりたくねーな(・へ・)と思うような車両も多く、こんなに面倒くさいのに二輪は何故白金プラグを入れないんだろう?と不思議だった。

しかしもう現代4輪もプラグを交換しようとすると、わんさか補機類をはずさないとダメだそうだ。

たとえプラグ交換にほぼ丸裸にしないといけない車両が出てこようが、コイツがこなす仕事の役割は昔から変わらない。適切なギャップ、ほんの少しの隙間に連続して火花を提供しないといけない。コールド時の劣悪状況でも全開時の超絶高圧力高温度時にも強い火花を目にも留まらぬ速さで。

それを一般プラグでは実売300円/1本程度、イリジウムなどの高性能にしても1200円/1本くらいで作る日本人はすごい。正直安すぎると思うのだが、今だにプラグ1本1200円とか言うと「高い!」と言う人も居たりする。カーボン外装とかにはいくらでも払っちゃたりするのに、、、大変だね、プラグ屋さんも。

Spark plug 電光石火_d0207730_12202862.jpg

左が中心電極にイリジウムに加え外側電極に白金チップという両端貴金属プラグ、右が一般的な中心電極のみイリジウムのプラグ。電極だけじゃなく外側電極の形状なども火炎核が成長しやすい形状に加工されてたりする。そういうのは密閉空間でのあっという間の出来事なので説明されてもわかんないが、メーカーはこれでもかというほど金も時間もかけ、特殊設備も備えて開発しているので信用するより他無い。逆に言えば一般人がちょっと考えたりして思いついたことなどで激変はしないということだ。そんなもの、48時間それしか考えてない技術者からすると、「はいはい(^_^;)」というくらいのモノだからだ。凝るのも持論もほどほどが良い。
一般プラグも悪いわけじゃない、中心電極はニッケル合金であるし、何より安価なのでホイホイと交換できるのが強み。プラグをグレードアップしての体感度合いの微妙さがなかなか難しい点だと思う。

白金プラグはデンソーが最初だったと思うがあとからNGKがイリジウムというのを出してきたと記憶している(トヨタ車の入庫がやはり多かったので、もしか間違ってるかもしれない)、当初出たてのNGKイリジウムを単車に試したところ、高回転では良いがアイドリング~中速域、スロットル開度では0-1/4くらいで微妙に失火するような感触が伝わり、他の単車でも試して似た症状が出たので過渡期のモノで4倍の値段にまだ見合わない、と敬遠していたが、初期の初期の話。だがすり込みはなかなか消せない。今だにイリジウムというと眉が動く。デンソーの白金があればそちらをチョイスしそうになる。

古いタイプの燃焼室形状をしていたりするとプラグとの相性というのもどういうわけだかあるにはある。全てフィーリングと実際の速度域で実際の道路での実走行でのことなのだが、例えば巷ではどうしようもないクソプラグという栄光をもらっているCHAMPION社製プラグはもう日本では本気で探さないと買うこともできないくらい知名度が低いが、ハーレーのとあるタイプにはNGKだと、ある一定域で必ずシャクるのにCHAMPIONにすると何事も無く気持ちよく走れる等の症例は数多あった。逆に日本車にCHAMPIONを入れると途端にどうしようもなく走らなくなったりもすごくよくあった。それをフィーリングと僕は感じた。いくら美人でもずーっといっしょに居たいと思えるかどうかはわからない、少々不細工でもいっしょに居たらめっちゃ楽しいし自然で心地よい、とかいうこともある、プラグも違うかもしれないが似たような感じじゃないだろうか。

2輪も4輪も今は点火系もデジタルになり全てが安定しているが、昔はポイント、コンデンサー、ちょっと良くてセミトラ、あこがれのフルトラ。しょっちゅうドエルアングルのテスターをつけては調整の機械開閉式の断続器から無接触タイプに変えても、それを分配するデスビ内で湿気多い日にスパークしたりとか、コードがどこかに接触する回転域での限定症状だとか、不具合箇所をどこからどう特定していくかとかは音や症状を観察するのが一番だった。でもその謎解きのような作業が本当に面白かったしやりがいがあった。今じゃ雨の日に失火する車、なんてありえないことだろう。

Spark plug 電光石火_d0207730_1248112.jpg

カブらせて道端で停めてプラグを乾かしたり、ワイヤーブラシで掃除したり、そういう時の角度がだいたいこういう角度で見てるからこれが一番よく浮かぶプラグ図かもしれない。

整備士でも気にしてチェックしている人をほとんど見かけたことがないが、プラグギャップが実はけっこう大事でその変化は体感できる。ただ、それを変更するのは簡単でギャップゲージでチェックして必要なら調整するだけだが、指定が0.7-0.8mmの車両を1.0mm以上に広げるには使用している点火装置が耐えれるかどうか、イグニッションコイルの性能、安定した強い電圧(バッテリー性能とケーブル等電圧降下の度合い)が必要なのでそれ相応の必要な箇所のシステムアップをしないと逆に負荷でノーマルの装置を壊してしまう。4輪では一般車両でも最初から1.1mm指定が随分前から多かったのも、とにかく点火系を強くしたいということだったんだろうか、当時はわけもわかってなく指定のプラグを「あ、これギャップ1.1だ」とか作業してた。

おかげで点火系ほぼノーメンテという理想の現代自動車ができあがって、旧車ラブな人以外は道端でプラグを掃除する人などもう見かけることは無くなっている。
by shonencamera | 2014-04-10 16:00 | 徒然事 | Comments(7)
Commented by cap65773 at 2014-04-18 21:25 x
こんばんは。
写真好きな僕は「サンニッパ」で検索して来ました。
よろしくお願いします!

で、スパーク・プラグですが、僕の中ではスパ・フランコルシャンで中嶋のマシンが『熱価が合わなくて』リタイアしたというF-1ベルギーGPのイメージが強いです。
「なんで最初走ってたのに、途中から調子悪くなるの?」
プラグって、微妙なとこあるのでしょうか?
普段は、なかなか引っこ抜いて見ませんよねプラグ。

では、また。
Commented by shonencamera at 2014-04-19 03:01
今どきサンニッパで検索されるのも珍しいですが、それでお越しになって、コレにコメントというのもおもしろいなぁと思いました、はじめまして。
一般車は熱価が+-1くらい違っててもほとんどの場合そんなに影響しませんが、ほぼ極限の使い方を前提とするレーシングエンジンの場合はすぐに影響すると思います。一般車でも熱価が2も違えば(例えば指定NGKで6のところを4にするとか)一般道では絶えずヤケ気味で、それでも走ること自体にはまぁ問題ないんですが、高速道路などで見事に電極が吹っ飛んでしまってたりします。どうしても常時高回転を維持して走る小排気量車は熱価が高く、低回転域で最大トルクを出す大排気量車では熱価が低い傾向がありましたが、今はECOエンジンでパワーの為じゃないのに一昔前のレーシングエンジンもお辞儀するほど高圧縮エンジンがファミリーカーにも載っているので、前述プラグのセレクトは当てはまらないかもしれません。時代が変わってしまいました。
ずーっとレッドゾーン付近を維持するサーキットでは焼け具合を常に見て判断しないと、最悪はせっかく組み上げたエンジンを壊しますから、地味ですがとても大事な作業なのは今も変わりないと思います。
Commented by cap65773 at 2014-04-19 19:56 x
なるほど。
確かに、今の一般車のエンジンは一昔前のレーシング・エンジンの教訓を生かして作られていますよね。
クルマが≪キレイ≫≪エコ≫なものになってきて、プラグを抜いたりなどの「ガス臭さ」や「オイルまみれ」から遠ざかったイメージが作られていますが、やっぱり元気に走らせるためには、メンテできる知識を持ったオーナーが大切ですよネ!
ちなみに、僕。昨今のデジタル写真にどうも納得できないので、フィルムで頑張っています。で、やっぱり《サンニッパ》の明るさとボケなんですねぇ。基本に立ち返ってみる、というか。
Commented by shonencamera at 2014-04-21 20:17
デジ1眼の一般普及の第一歩だったEOS D30(300万画素機)からもう14年にもなるので、今はフィルムvsデジ一眼なんて聞かなくなりましたが、どちらが良い悪いではなく使う側の表現したいコトに適しているかどうか?という感じになってきました。デジしか知らない人の比率も随分増えたと思います。その中で、そして今、フィルムをチョイスするというのはかなりの琴線に振れるものがあったことと思います。嬉しく思います。サンニッパはフィルム時代のひとつの憧れでありましたし、これまで4本ですが使ってきての感想は、どれも素晴らしく、各メーカーの誇りと根性の集大成のようなレンズだと思っています。デジも同様ですが、フィルムも「フォーマットの大きさ」というのが画にめちゃくちゃ影響しますので、35mmサイズにコダワリがなければ、ブローニーサイズは多少暗いレンズでもとろけそうなボケと描写をたたき出しますし、4x5になるとひっくり返りそうな立体感がでます。フィルムをある程度現実的な金額で楽しめるのは今のうちだと思いますので、サンニッパでも、そして是非他のフォーマットの色んなレンズでも楽しんでみてください。デジタルでは味わえないコトは山ほどあると思います。
Commented by cap65773 at 2014-04-21 21:04 x
ありがとうございます。
どの時代にも、根性入れて造ったり撮ったりしているいい大人がいるんですよネ。そこがイイんです! 自分も負けないゼ、ってやるんですよね。
これからも、また、面白い(ためになる)お話しよろしくお願いします。
僕も頑張ります!
Commented by 脱力 at 2014-04-27 11:39 x
プラグってホント一般人は気にしないですよね。

昔、NGKが、擬人化したプラグが、
「もっと気にして欲しい…私のこと」
というコメントをする意味深な広告を出していたのを思い出します(笑)

今の僕のゼファー750は、当たりのエンジンで、すごく調子良くて、ついプラグのメンテを怠りがちですが、
ホンダ車に乗ってたときは、マメにメンテしてました。
ちなみに、ホンダ車、プラグの交換がしにくい車種が多いのは気のせいでしょうか?
Commented by shonencamera at 2014-04-28 09:19
cap65773さん
そうですそうです、造り手の思惑を自分なりに少しでもあれこれ感じたり、それなりに大枚投入してますので少々贅に浸ったり... 楽しみながらまたどこかの箇所から新しく感じれるモノがあったりしますよね。
気持ちの面でも「負けないぜ」という内に秘める心意気は私も好きです、それは必ずいずれ身になり形になると思っています。

脱力さん
NGKのコピー、確かにありましたね、覚えています。
ホンダ車に限らないんじゃないでしょかね?水冷全盛なってから急にアクセス困難車が増えたような記憶が強いです。深いプラグホールが必須のヘッド形状がほぼデフォルトになってから、プラグに限らず何かをチェックする際にその箇所に直接目視アクセスができないエンジンはとても神経を使うので少し難儀ですね。


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